手作り紙芝居で戦争語り継ぐ

戦後80年「自分たちにできることがある」/金沢ヒューマン文庫を愛し守る会が府相公民館で上演会開く

2025/08/01

手作りの紙芝居と(右から)舩坂さん、市川さん、牧野さん、渡邉さん=蒲郡市内で

 戦時中の体験談をもとに紙芝居を作っている蒲郡市の市民団体「金沢ヒューマン文庫を愛し守る会」は2日、市内で上演会を開く。戦後80年を迎え、体験者が減っていく中で「自分たちにできることがある」と、証言を語り継いでいる。

 会は2004年に発足。前身の団体が戦争体験者の声をまとめた書籍「50人の証言・わたしの戦争体験」をもとに、07年から朗読会を始めた。

 さらに「子どもにも分かりやすく伝えたい」と09年、太平洋戦争中の三河地震をテーマにした紙芝居「じしんはおそげえ」を制作した。以降、シベリア抑留や豊川海軍工廠(こうしょう)などをテーマに計7作を完成させた。夏に上演を続けている。副会長の渡邉澄子さん(77)は「世界で戦争の火花が散っている。言葉だけで伝えきれない思いを、目からも感じ取ってほしい」と話す。

 ▼伝承の難しさ

 会は現在25人ほどで活動している。中心となる70代の会員たちは戦後生まれだ。体験者の「生の声」は、ますます貴重になっている。加えて「本当の悲惨さを知っている人は語りたがらない」と、会員の牧野美千代さん(73)は聞き取りの難しさを語る。

 牧野さんの父は終戦直後、シベリア抑留を体験している。しかし「つらかったはずなのに、当時の面白い話ばかりして笑わせていた」という。牧野さんは「体験した人にしか分からないことがある。でも、戦後生まれの私たちが伝えるためにできることはあるはず」と力を込める。

 ▼描くも読むも涙

 作画を担当したのは市川雅子さん(68)。1話を描くのに丸一日かかるという。想像で描けない場面は、昔の写真を参考にしている。7作のうち「つしま丸のそうなん 戦争はいやばい」は、児童を乗せた疎開船が悪石島沖で沈没する話。描いた市川さんも、紙芝居を読む人も涙を抑えられなくなる。

 市川さんの父も戦争に行ったが、何も語らなかったという。「それでも事実を伝えることが大切。悲惨さを知ることが、戦争への一歩を止める力になる」。

 目下の課題は後継者不足。会員の高齢化が進み、体力的に厳しい。会長の舩坂清伸さん(78)は活動を続けるため、若いお母さんたちに声をかけているという。「最近は、読み聞かせに関心を持つ人が少なくない」と期待を寄せている。

 上演会「親子で平和を学ぼう」は2日午後1時半から、同市府相公民館で開催。紙芝居「あゝキノコ雲」を上演するほか、絵本の読み聞かせ、朗読、戦争体験者の対談などがある。定員60人。

 問い合わせは、府相公民館=電話0533(68)2705=へ。

子どもたちが犠牲になる戦争の悲惨さが描かれている=蒲郡市内で

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