発案者・佐原元市長新アリーナへ期待/「再開の道筋示すべき」長坂市長に注文も
2025/08/09
新アリーナへの期待と長坂市長への不満を語った佐原元豊橋市長
住民投票を経て事業の継続が決まった豊橋市の多目的屋内施設(新アリーナ)計画。この構想を最初に唱えた佐原光一元市長は、市民が夢を持てる施設になることに期待感を抱いている。一方で、長坂尚登市長に対しては、そのリーダーシップのあり方に厳しい目を向ける。
東日新聞の取材に佐原氏は、新アリーナには「スポーツをする人、支える人、愛する人というスポーツに何らかの関わりがある人が『あそこに行ったら夢が何かひとつでもかなうかな』と思える施設になってほしい」と述べた。その結果として、まちの発展や防災機能の向上などにつながるとの認識を示した。
市民に対し「ハコができて終わりではなく、ハコをつくるところからが始まりという意識を強く持ってほしい」と呼びかけた。
事業継続に「賛成」が「反対」を上回った先月20日の住民投票の結果を踏まえ、契約解除方針だった長坂市長は事業再開に舵(かじ)を切った。ただ、佐原氏は「止まっていた間もかかっていたお金は抜きにしてでも、すぐに工事をして後でそこは誠意をもって対応しましょうという話が進んでいないのが一番心配だ」と指摘。「どういうふうに再開するのかという道筋を、彼は示さないといけない」と長坂市長に注文をつける。
市長選直後の長坂市長の意向で工事が止まり、建設予定地の旧豊橋球場での発掘調査も中断したことを念頭に「本当なら、とっくに球場の残務は動いていないといけないのに、動いていないところを見ると住民投票の前に、もしもの準備は何もしていなかったのだろう」と「賛成多数」を想定した体制を市が取っていなかったと推測する。
佐原氏は市長だった2017年3月、首相官邸で開かれた「未来投資会議」で当時の安倍晋三首相に新アリーナ構想を説明した。このときの計画は、事業提案の公募に名乗りを上げた民間企業との協議がうまくいかず頓挫(とんざ)したが、20年の市長選で佐原氏を破った次の浅井由崇市長が別の計画に練り直して発表し今に至っている。
現行計画を作る際、以前と変わらず豊橋公園を予定地にした浅井氏の判断には「ゼロベースで見直し」との選挙公約を反故(ほご)にされたと感じた有権者も少なからずいて、それが昨年の長坂市長誕生を後押しした。就任直後から解約手続きに突き進んだ長坂市長と計画推進派が多数を占める市議会の対立は激化の一途をたどり、同市初の住民投票の実施にもつれ込んだ。