災害時垣根超えて助け合いを

豊橋手話ネットワーク普及活動/「手話は言語」の理念/夏休み子どもたちに防災紙芝居披露

2025/09/01

子どもらに紙芝居を披露する豊橋手話ネットワークのメンバー(豊橋市内で)

 耳が不自由な人や手話通訳者が活動する「豊橋手話ネットワーク」は、各種イベントに参加して「手話は言語」というスローガンを掲げた普及活動に励んでいる。夏休み中には子どもたちに「防災紙芝居」を披露。先進的な取り組みは全国の自治体にも取り入れられ、誰もが災害時に助け合える精神を育んでいる。

 ◆子どもらへ伝授
 手話ネットワークのメンバーは夏休み中、豊橋市内の児童クラブを訪問。手話を用いたゲームなどを行ってふれ合った。「ありがとう」や「こんばんは」など、あいさつの仕方や食べ物を示す表現を伝えて手話が身近なコミュニケーション方法であると紹介した。

 紙芝居では指定避難所で耳の不自由な人を手助けする手話を伝授。支援物資や食料が行き渡るよう「聞こえない人がいたら、教えてあげてください」と児童に呼びかけた。

 手話ネットワークは2018年、通訳者や聴覚障がい者団体、手話ボランティアグループが集まって発足した。これまでに「食べ物を配ります」や「困った人はいませんか」などと絵柄付きで記した「防災絵カード」を市に寄贈。取り組みに共感した全国の自治体から問い合わせが相次ぎ「とよはしモデル」の各データを無償で提供している。

 東日本大震災の避難所では、耳の不自由な住民が支援物資を受け取れない事態が散見。混乱する現場で助けを求めることをためらうろう者は多いという。

 団体は問題を解決するため、「薬」や「歯科」に関する絵カードも作成。コロナ禍には「買い物」や「ワクチン」のカードも作り、ろう者の日常を支える取り組みを進めている。平松靖一郎副代表は「いつでも、誰でも、気軽に、というのがネットワークの理念。裾野を広げて社会的な認知を高めていきたい」と話す。

 ◆理念も伝承
 今年7月にあった津波警報の際は、各メンバーの安否を確認し合った。平松副代表は「災害時は通訳者も被災者になることを想定しないといけない」と語る。一昨年にあった豪雨災害の状況も踏まえ、非常時の連絡網を再確認したという。

 団体は国や市から数々の褒章や賞を受けてきた。一方で会員の高齢化が進み、次世代へ信条を継承する思いも深める。児童クラブでは手話を「見たことある」という子どもらの声が聞こえ、平松副代表は「身近な存在になりつつある」と草の根活動に手応えを得ている。

 9月1日は「防災の日」。11月には東京都で聴覚障がい者による国際スポーツ大会「デフリンピック」が開かれる。平松副代表は「防災や手話というカテゴリーを大衆化することが重要」との節目の日やイベントを介して意識が高まることを願っている。

 「聞こえない」や「助けを呼べない」などの困り事はあらゆる市民にも想定される。平松副代表は「誰にもできることがあると知ってもらいたい。ろう者への理解は、気づきの精神を深めることにつながる」と垣根を越えた活動を進める意志を強めている。

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