「平和のバトン」次世代へ

「渥美線電車機銃掃射」語り継ぐ「前日の会」/新たな仲間加入 さらなる参加呼びかけ

2025/09/09

田原東部校区戦没者追悼式に招かれ、紙芝居を上演。彦坂代表㊧と山田前代表(田原市内で)

 悲惨な出来事を繰り返さないためにも「平和のバトン」を次世代につないでいくのが使命―。終戦前日の1945年8月14日、現在の田原市で米軍機から電車が銃撃を受け、31人が死傷した「渥美線電車機銃掃射」について語り継ぐ市民グループ「前日の会」(彦坂久伸代表)は、戦後90年に向け新たなスタートを切った。活動に賛同する新しい仲間3人が加わった。さらに参加を呼びかけ「若返りを図りたい」としている。

戦後90年に向けて若返り目指す

■平和の思い共感
 前日の会は、前身の「豊川流域研究会」を含め活動が10年を過ぎる。銃撃を受けた電車の乗客や目撃者、救護・救助者らから聞き取った約50人が当初、会員となり、元教員の山田政俊前代表や彦坂代表が運営する。

 活動は、戦争を学習する地元小学校6年生の出前授業が中心で、空襲体験を通じて不戦を伝えるのが狙いだ。聞き取りを基に作った紙芝居「前日物語」の上演のほか、会員が語り部となり体験談を語る。高齢会員に代わって会員の女性も語り継ぎを務める。出前授業は他の団体を加えると百数十回に及んだ。

 しかし、会員の高齢化で、今では出前授業の参加者が数人。「所帯」は運営側を含め十数人と小さくなった。一方で3月、市議会で活動が取り上げられて市が説明板の設置に動き出した。その後、市のほかに現場がまたがる田原東部、神戸両校区であった戦没者追悼式に招かれるなど機銃掃射の出来事が浸透していったという。

 山田前代表が先月10日の慰霊祭で、「『戦後80年』の80と言う数字が90、100と増え続け、ご破算にならないように願う」と集まった人たちに訴えた。そのうえで「語り継ぎなどをやりませんか」と地元新聞店のPR版で会員を募ったところ、田原東部校区の60代女性が共感し名乗り出た。野田地区の60代男性2人は山田前代表を通じて手を挙げた。

 山田前代表、彦坂代表ともに後期高齢者。3人と相談して語り継ぎや運営面を含め分担を決めて育成するが、将来的にはこの世代に後継したいと願っている。

 出前授業を始めてから約10年。最初に受けた6年生は大学生や社会人になった。この世代の参加も欠かせない。今後、田原東部、神戸両校区の広報誌で会員の募集を検討している。

■「先輩の遺言」
 すでに亡くなった会員の多くは生前、「戦争だけはいけない」と言っていた。彦坂代表は「近いうちに戦争世代はなくなるだろう。『先輩の遺言』を次世代にバントを渡すのが私たちの役割で、それを果たしていきたい」と語った。

問い合わせは、彦坂代表(携帯電話090―9928―7491)へ。

◇ ◆ ◇
渥美線電車機銃掃射 終戦前日、三河田原駅を出発した名古屋鉄道(現豊橋鉄道)渥美線の電車が、現在の田原市の神戸駅付近で米軍機P51の機銃掃射を受け、乗客約40人のうち乗員らを含め15人が死亡、16人が負傷した。近くの踏切の前に「大東亜戦争動員学徒殉職之碑」が建立されている。

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