飲酒して2件のひき逃げ事故・被害者は苦悩を訴える ㊤
2025/11/16

ひき逃げ事故を起こした車両(豊橋署で)
豊橋市内で今年4月に飲酒運転をして2件のひき逃げ事故を起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)と道交法違反の罪に問われた男の裁判がこのほど、豊橋地裁であった。裁判長は「無謀で危険な運転」として懲役2年8カ月(求刑4年)の実刑判決を言い渡した。男は信号無視を繰り返して事故後に車を放置して逃走していた。公判には被害者の男性が出廷して苦しみを切に語った。判決詳報と被害者の思いに迫る。
事故は今年4月16日午前6時ごろに発生。男は飲酒して乗用車を運転し、交差点2カ所へ赤信号の状態で進入。軽乗用車と会社員男性のオートバイに衝突した。いずれも救護や通報をせず、後部の扉が飛び出すほどに損壊した車を歩道へ放置して逃走。その後に逮捕されていた。
公判で男は起訴内容を認めた。検察は冒頭陳述で男の当日の行動を示した。前日夜から複数の店で飲酒した後、一緒にいた女性2人を乗せて運転を開始。約71キロの速度で赤信号の交差点に入って軽乗用車とぶつかり、二つ先の赤信号も無視して約110キロの速さで男性のバイクをはねた。逮捕後の検査では、体内のアルコール濃度は基準値を大幅に超える値が出ていた。
男は逃走した後、以前に住んでいた空き家で2人の女性と共に眠っていた。事故時の心境や信号の状況について「覚えていない。車が爆発すると思い、女の子の安全を考えて家に行った」と語った。
検察は「被害者に落ち度はなく、約1時間20分にわたって飲酒運転した動機にくむべき事情はない。規範意識が鈍く悪質」として懲役4年の刑を求めた。
弁護側は、事故後に職場を解雇されて妻と離婚しており「前科はなく反省しており同居する母親の監督も期待できる。再犯の恐れはない」として執行猶予付きの判決を求めた。
裁判長は「安易な飲酒運転で事故を起こして立ち去り、危険かつ無責任。くむべき事情はない」と指摘。反省して一定の社会的制裁を受けているとしても実刑に処するのが相当とした。
判決文を言い渡した後に「もう一度事故を見直し、今後も誠意を持って被害者への対応に当たってください」と呼びかけた。