まちの発展にどう生かす?

公約「新アリーナ中止」撤回後問われる手腕/長坂豊橋市長就任1年 会見で「少しずつ前へ」/「火種」複数くすぶる中 政策推進の重責

2025/11/16

定例会見での長坂尚登市長(豊橋市役所で)

 豊橋市の長坂尚登市長は、17日で就任から1年を迎える。選挙公約だった多目的屋内施設(新アリーナ)計画の中止は、その後の住民投票によって撤回を余儀なくされた。残りの任期では、アリーナをまちの発展につなげる準備を整えられるか、政策推進の重責がその肩にのしかかる。

 先月27日の定例記者会見で、就任1年を前に記者から所感を問われた長坂市長は「振り返る余裕もないくらい濃い1年間で、ずっと前ばかり見て進んでいた」と述べた。

 長坂市長は昨年11月の市長選で、現職を含めた事実上の三つどもえの争いを制し初当選した。就任してすぐ、公約に掲げていたアリーナ事業の契約解除に向けた手続きに着手。事業推進派が多数を占める市議会の反発を招いた。

 昨年12月定例議会では、議会の議決を経て結ばれた契約は、それを解除する場合にも議決を必要とするよう条例を改正。これにはアリーナの契約も含まれ、議会側の対抗策との見方がもっぱらだ。その後、愛知県知事への審査申し立てを経て市側が議会を提訴する異例の展開をたどった。

 2025年度予算を審議する3月定例会でも長坂市長と議会の攻防は続いた。推進派議員らから予算の組み替え動議が提出され、長坂市長はアリーナ関連の事業費を盛り込んだ補正予算でこれに応じた。

 成立したものの長坂市長が計画中止の方針を堅持して予算執行のめどは立たず、他方で事業者との解約協議も停滞し、事態は暗礁に乗り上げた。局面を打開するため、住民投票で計画の賛否を問うことに。7月の投票結果は賛成多数となり、長坂市長は事業継続へと方針転換した。先月、建設予定地の豊橋公園で約11カ月ぶりに工事が再開した。

 当初の計画から2年遅れの4年後に予定されるアリーナの開業に向けて「市長はやることがいっぱいある」と指摘するのは愛知大学の藤田佳久名誉教授。「地域のリーダーとして、まちをどう作るのか具体的に考え、シミュレーションしないといけない」とし、アリーナを生かした全国のまちづくりの先進事例を検証すべきと提言する。

 アリーナの方向性が決着した一方、工事休止期間に生じたはずの追加費用は未解決のまま。同事業に伴う野球場の移転計画も宙に浮いた状態だ。前市長のパワハラ疑惑を記した選挙ビラを市長選で長坂氏の陣営が配布したことに端を発した問題でも進展は確認されていない。長坂市政はいくつもの火種を抱えている。

 会見で長坂市長は、就任2年目以降も「今と変わらず少しでも豊橋を良くできるよう、市民が喜んでくれるよう少しずつ前に進めていきたい」と語った。

工事が再開された新アリーナの建設予定地(豊橋公園で)

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