王子のジュークボックス 

プリンスが遺した楽曲〈第3回〉

【Call My Name】

2026/06/14

 ごく短いドラムブレイクの直後に「僕の名前を呼んで」と滑らかなファルセットが続き、ゆったりとしたテンポの美しいバラードが始まる。裏声と地声を行き来するソウルマナーに沿った歌唱はプリンスの真骨頂。そしてボーカルと同じくらい注目したいのは「間」の使い方だ。

 フルバンドでの演奏だが、楽器の音は最小限でとにかく隙間が多い。普通の曲では存在すら忘れられがちなベースの音もはっきりと主張し、ここしかないという箇所にそれぞれの音が収まっている。

 楽器や音の数を増やせば多少のアラは隠せる。逆に音の数を絞って隙間を多くすればごまかしが効かなくなる。演奏者の力量が丸裸になるような無駄をそぎ落としたアレンジができるのは自信の表れだろう。

 パソコンだけで作られた音楽の台頭に対し「本物のミュージシャンによる本物の音楽」というフレーズを掲げていたプリンスならではの楽曲である。

 ちなみにプリンスは、1994年から約7年間、読み方の無いシンボルマークに名前を変えていたので、ファンは彼を「プリンス」と呼べずにモヤモヤしていた時期がある。

 このタイトルは、そんな改名期を超えてアーティスト名をプリンスに戻した本人が「また僕のことをプリンスと呼んで構わないよ」と優しく語りかけているようでもある。

 プリンスと呼ぶなと言ってみたり呼んでくれと言ってみたり、オレ様全開なのだが、それこそがプリンスらしさなのだから、やっかいである。
                 (自称プリンス学芸員 ひろあつ)
                     ※次回7月12日掲載予定。

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