この人に聞く
【第13回】森田泰斗・森田グループ社長
2026/08/31

豊橋市八町通に本社を置く森田グループ(こどもスクール)は、そろばんや書道、アートを教える教室を愛知・静岡両県に約100カ所展開する。2022年にはベトナムの首都ハノイに進出し、私立小学校5校で日本式そろばんを課外授業として導入した。計算力に加えて直観力やしつけも養われるとして評価を広げてきた。ことし7月には、この取り組みが文部科学省の「EDU―Portニッポン」に採択された。過去10年で採択されたのは全国で年平均13社ほどにとどまり、豊橋の企業としては初めての快挙となった。
森田泰斗社長(60)は、そろばん教室の経営と並行し、ベトナム人技術者を日本企業に送り出す「クレイベトナム」の取締役も務める。この仕事を始めて9年になる。
森田氏によると、円安は人材確保の逆風になっている。この5年でベトナムドンに対する円の価値は約2割目減りした計算だ。手取り20万円のうち4万円を家族に送金していた技術者にとっては、仕送りの実質価値が消えたに等しい。日本で働きたい理由を尋ねると「お金を稼ぎたい」との答えが最初に返ってくることが多かったかつての技術者は、この目減りを経験して帰国する例が相次いだという。
一方で、状況を悲観してはいない。来日を目指す層そのものが変わりつつあるとみる。ハノイの大学卒業者に来日理由を尋ねると、ここ2、3年で「お金を稼ぐこと」が一番ではなく、日本文化への関心や、日本人の考え方を経験したいという声が最も多くなったという。もっとも、技術者全体の絶対数でみれば、お金を稼ぎたいという動機は依然として最も多いという。
資料をきれいにそろえて置くなど、日本人が無意識に行う所作も、外国人には強い魅力として映るという。森田氏はこうした習慣の背景にある「知・徳・体」を育む全人教育こそ、日本式教育の真髄だと捉える。国内の「こどもスクール」で培ってきたこの全人教育を、ベトナムのそろばん指導にも応用し、技術に加えてあいさつや片付けといった所作をあわせて教える点に力点を置く。来日前の教育も重視し、日本語をN3からN2の水準まで引き上げるほか、運営する教育施設で早めの登校や大声でのあいさつ、清掃当番、日誌の記入を課している。この積み重ねが、来日後に製造現場で重んじられる整理整頓の習慣にも違和感なくつながるという。
技能実習制度と異なり、森田氏が扱う「技術・人文知識・国際業務」(技人国)の在留資格の導入の壁は企業規模が小さいほど高くなるが、受け入れの可否を分けるのは、企業規模より経営者の姿勢だとみる。「外国人材も1人の人間として寄り添わなければ、長期的な雇用には絶対につながりません」と語る。日本型の雇用慣行と、海外で一般的な職務範囲を明確にした働き方が交わる現場では、双方の歩み寄りも求められるという。
卓越した技術を持ちながら、それを継承する人材の確保に苦労している中小企業にこそ、外国人材の活用を検討してほしい。日本式教育をベースとした外国人材紹介で中小企業の課題解決を担う。
※次回は9月7日付掲載予定。