「経験と勘」から脱却/豊川用水次世代農業推進協設立の呼びかけ人・小久保三夫氏に聞く
2024/09/03
「協議会の設立を実りあるものにしたい」と語る豊川総合用水土地改良区の小久保三夫理事長
厳しい状況に陥った東三河を中心とした農業の再建に向け、官学団体で組織された「豊川用水次世代農業推進協議会」(会長・江口幸雄副知事東三河担当)が動き始めた。設立を呼びかけた83歳の豊橋市の豊川総合用水土地改良区の小久保三夫理事長が、老骨にむち打ち再建にかける思いは何か。先端技術や農業データを駆使しスマート農業を取り入れ、どんな農業を目指すか。東日新聞は話を聞いた。
■農業でお返し
―農業の再建に乗り出した理由は
東三河は、静岡県湖西市を含め全国有数の農業地帯。高齢化で農業の担い手不足に加え、新型コロナウイルスによって被害が広がった。ロシアのウクライナへの軍事侵入、中東情勢の緊迫化などで肥料や燃料、資材が高騰。農家の所得は大きく落ち込んだ。
「これでは農業が駄目になる」。かつて第3セクターに勤め、住宅開発で農地をつぶした。「罪滅ぼし」の思いから農業でお返しをと考えた。
―協議会は7月に発足した。なぜ、設立を呼びかけたか
過去に通算で県議5期約17年間務めた。個々での再建は難しく、組織の協力が必要と思い、昨年秋から行政を中心に行脚を始めた。県に「再建するのはあなたたちの仕事」、水資源機構には「農業を良くするとの思いを強く持ってほしい」と伝えたことで双方が動き、農林水産省や地元の自治体、大学、JAも加わり、メンバーが増えていった。半年後の「スピード設立」は、裏返せば危機感の表れと痛感した。
―どう進めるか
■先進地視察
協議会内の検討部会などで検討を重ね、これまでの「経験と勘の農業」から脱却し、再生可能エネルギーの供給や農地を集約して増産を目指すスマート農業に取り組む考えだ。すでに改良区役員らが東北を先進地視察した。使っていない温室の把握など実態調査を始め、新しい農業の先駆けとなるモデルケースをつくっていきたいと考える。
―一方、農地の激減で荒れ地が増え、点在するところも。再生し集約できるか
農業用水の通水ころに土地整備を進めたが、同じようにする必要があると思う。これが農家の負担にならないように協議会で議論を進めたい。何よりも多くの機関が参加した。実りあるものにしたい。
メンバーは東海農政局、愛知県、水資源機構、豊橋市など6市、地元3大学、JAなど。スマート農業の活用やカーボンニュートラルを豊川用水の受益者に実現させ、地域ぐるみで新しい農業を目指す。県東三河農林水産事務所と水資源機構豊川用水総合事業部、豊川総合用水土地改良区の各担当課に事務局を置く。