蒲郡産カキ/市や漁業関係者ら手応え/効率化がカギ「豊かな三河湾」ゆえの課題
2025/04/07
試食会で振る舞われた蒲郡育ちのカキ(蒲郡市・三谷漁協で)
情報通信技術(ICT)を取り入れたカキの試験養殖が、蒲郡市で進められている。カキの成育状況は良く、試食会では「身がしっかり詰まってうまい」と評価は高い。作業効率などに課題が残るものの、主要なアサリの不漁が続く中、養殖カキの産地化に活路を見いだそうとしている。
試食会は先月下旬、三谷漁協で開かれ、漁業者や市職員など関係者が集まった。同市沖の三河湾で育てられたマガキは、長さ5~6センチ、重さ50~80グラムほどに成長し、蒸して提供された。参加者らは「身が大きくて、プリプリしている」「すごくおいしい」と舌鼓を打った。
市内の漁協でつくる市漁業振興協議会が一昨年から、徳島県の水産ベンチャー「リブル」と連携し、ICTを活用した「スマート養殖」に取り組んでいる。
実証実験は、三谷と竹島の2カ所の漁場にカキの稚貝を投入し、センサーやアプリで成育環境を分析する。昨年8月、約10㍉の種苗1万6000個と、約20~30㍉の中間育成貝5000個を育ててきた。水面に張ったロープに筒状のかごを取り付ける方法で、1かごに数十個の稚貝を入れる。
リブルの報告によると「三河湾は全国的に見ても海が豊かで、成育状況がいい」と高評価だ。その反面、栄養分である藻や、フジツボなどの付着物を取り除く作業が通常の2倍ほどに及ぶため、効率化が課題だという。
また、秋にかけての集中的な雨で漁場の塩分濃度が下がるのがこの海域の特徴で、夏場の高水温が続くと、カキの大量死につながる。本年度以降は生存率の向上に取り組むという。
リブル代表の早川尚吾さん(37)は「安定的に年中販売するため、効率化を追求したい。道半ばだが、市と漁協と連携し、手法の〝見える化〟を実現する」と意気込む。
市は県内有数のアサリの産地として知られるが、近年は不漁が続く。漁業者の高齢化や後継者不足も課題になる中、ICTの活用や6次産業化を視野に、漁業の活性化を図る。
同協議会長で三谷漁協組合長の小林俊雄さん(79)は「作業が多いのは課題だが、稚貝を入れる時期を工夫して解決できれば。蒲郡産カキの付加価値を高めて、ぜひ成功させたい」と期待を込める。