豊橋技科大/減量効果成分「フコキサンチン」含む珪藻/市場規模数百億円/事業化へベンチャー企業設立
2025/04/19
珪藻の大量培養に成功した広瀬侑准教授
豊橋技術科学大学応用化学・生命工学系の広瀬侑准教授が、減量効果のある成分「フコキサンチン」を含む珪藻を大量に培養する技術を開発した。既に事業化に向けたベンチャー企業を設立。珪藻を健康食品などの原料としてメーカーに提供し、将来的には数百億円規模の市場に成長することを期待している。
抗肥満作用があるフコキサンチンは昆布などの海藻に含まれることが知られ、広瀬氏によると「4カ月間の摂取で6キロの減量効果がある」と報告されている。しかし、昆布からの抽出にはコストがかかり、1グラム=1万5000円と高い価格がネックとなり、流通量が限られてきた。
そこで光生物学が専門の広瀬氏は、フコキサンチンを昆布の数十倍含む珪藻に注目。珪藻は捕食生物の混入により大量培養は困難とされてきたため、生物の混入を防ぐために酸性液での培養実験を行った。10種類以上の珪藻類を試し、その中から耐酸性のある珪藻を発見。使われなくなった豊橋市内の温室を使用し、半屋外環境でも雑菌の混入を防ぎ、安定的に大量培養できる試験にも成功した。
珪藻の大量培養技術は国際特許を出願し、事業化を目指したベンチャー企業「サイナルジ」(代表=広瀬侑)を設立。フコキサンチンを含む珪藻を粉末に加工してメーカーに提供、錠剤や機能性表示食品として商品化していく計画を進めている。すでに複数のメーカーと協議を始めており、5年後の売上高8億円を目標としている。
広瀬氏は18日に開かれた定例記者会見に出席し、スピルリナやクロレラなど藻類の国内市場規模を念頭に、フコキサンチンを含む珪藻の商品価値を「機能性表示食品の製造・販売で数百億円以上の市場を開拓できる」と期待した。また、県内で施設園芸の耕作地が減少していることから「未利用温室を利用した新しい農業で、県内に産業と雇用を創出できる。コストを削減する守りの農業から、収益性の高い『攻め』の農業に転換したい」と地域に貢献していく考えも語った。