豊橋技科大と名大の研究チーム実験で判明/脳の視覚処理特性が影響か
2025/07/10
グレア錯視の例。円で囲まれた中央部分の明るさは左右同じだが、グラデーションで囲まれた左の方が明るく見える(提供)
統合失調症のある人は、光がまぶしく見える「グレア錯視」を一般の人より強く知覚する傾向があることが、豊橋技術科学大学と名古屋大学の研究チームによる実験で分かった。視覚情報の処理に関わる脳の特性が影響している可能性があるという。
グレア錯視とは、明るさのグラデーションによって中央が実際より明るく見える錯覚で、照明が光っているように感じることもある。研究では、統合失調症のある30人と健常者34人を対象に、タブレット上で錯視画像を比較し、どちらがより明るく見えるかを判断させた。
その結果、統合失調症のある人は錯視を強く知覚する傾向が見られ、集団内の個人差も大きかった。目の疲れや視力といった要因とは関連はなかった。幻覚や妄想などの症状が出る統合失調症は、現実の捉え方に変化が生じる精神疾患で、脳の知覚処理の違いが実験結果に影響したと考えられるという。
第一著者の田村秀希助教(豊橋技科大)は「錯視の見え方には個人差があり、見える、見えないで不安に思う必要はない」と話す。研究は病気の診断には使えないが、脳の情報処理の仕組みを理解する手がかりになるという。
今後は、錯視と脳機能の関係をより詳しく解析し、統合失調症の多面的理解を目指す。