田原市の画廊喫茶「神戸館」/地元の芸術文化・福祉活動支援に多大な功績/店主の長澤さん「感謝しかない」/発表・鍛錬の場 消える「文化の灯」惜しむ声
2025/08/27
41年間にわたり画廊喫茶「神戸館」を切り盛りしてきた長澤さん夫婦(田原市神戸町で)
開店以来、絵画を楽しむ人たちに作品発表の場を提供し、チャリティー絵画展も続けてきた田原市神戸町の老舗の画廊喫茶「神戸館」は、28日で閉店し41年の歴史に終止符を打つ。店主の長澤孝治さん(89)は、「アマチュア画家」を育て、チャリティーの売上金全額を福祉施設に寄付した。地元の芸術文化や福祉の活動を支援した功績は少なくなく、携わった人たちは感謝している。
■田原ク約30年
長澤さんは絵が好きで、芸術に造詣が深い。1984年、現在地に画廊喫茶を開店させた。その際、地元の「田原絵画クラブ」の創設者から「描く人、見る人の意識を高めたい」との作品展開催の申し入れがあり、その場を提供した。
元紡績会社の従業員採用担当でもあった。地方を回り、貧困家庭が多いと知った。この教訓を生かし、提供を受けた作品で弱者を支援するチャリティー絵画展も始めた。
作品展は8月に実施。2023年までで開かれ、延べ2000人以上が出展した。このうち絵画クラブは2014年ぐらいまで約30年間続けた。その後、豊橋市植田町のそば店経営でプロ顔負けの絵を描く原勉さん(78)が、10年ほど個展を開くなどした。ともにチャリティーにも協力した。
チャリティーも最後が23年。41回開かれ、出展者は延べ1000人以上に上った。出品した絵画や雑貨のほか、長澤さんが集めた絵画コレクションの一部などを販売し、売上金全額を市内の福祉施設に寄付した。07年以降、市内でグループホームを運営するNPO法人「うたた」に寄付を続けた。寄付総額は1000万円近くに及んだ。
長澤さんは、41年間を振り返った。絵画クラブについて「他の会に属し多くの賞を取って実力を発揮した人がいた」と一部がアマチュア画家に成長したことをたたえた。原さんに対し「年齢とともに力を付けている」と絶賛。支援したうたたの頑張りぶりに目に細め「社会福祉に貢献し、うれしく感じた」と喜んだ。
■文化の灯消える
田原絵画クラブの大場一男会長(77)は「発表の場を与えてもらい、会員の技術を高めることができた」と感謝。チャリティーについて「長く続けることは並大抵ではない」と話した。「(画廊喫茶は)鍛錬の場であり、成長させてもらった」という原さん。だが、「文化の灯が消える」と悔やんだ。
一方、うたたの中根昌子理事長(67)は「支えがあったこそ事業が続けられた」とお礼を述べた。
長澤さんは今年に入り心臓の病気で入退院を繰り返し、転倒も多くなり「潮時」と思い、閉店を決めた。「これほどまで長く続けてこられたのはみなさんのおかげ。感謝しかない」と話した。
最後の27、28日は午前の6時から11時まで営業する。