生徒の意思尊重、自立心高める/制服の自由化など
2024/07/01
自由度の高い服装で授業を受ける生徒
県立豊橋工科高校(豊橋市草間町)は、本年度から新たな制服を導入するなど、生徒の意思を尊重しながら自立心を高める取り組みを進めている。従来の高等教育とは一線を画する方針で、同校教員は「自由に伴う責任を感じながら、自ら考えて決断できる子どもを育てたい」と理念を語る。
◆自由と責任
制服は、従来の学ラン型を残しながら、今年4月からブレザータイプを導入。昨年からは、生徒の発案により私服で登校できる期間「とよこうエコスタイル」を始めた。制服の着用は自由で、6月から9月と12月から翌2月までの期間は、各生徒が選んだ服装で暑さや寒さを調整している。
夏場はTシャツと短パン姿で授業を受けることもできる。校則には「清潔感」や「きちんと感」、「過ごしやすいエコ活動に考慮」など、あえて曖昧な表現にとどめて生徒が選択する余地を残している。
同校生徒指導主事の糸井亮太教諭は「自ら選んだ服装には責任が伴う。ルールで縛るのではなく、考えて選択するためのひとつの取り組み」と語る。
女子生徒の化粧は禁止せず「華美にしない」と自主性を尊重。希望者へのアルバイト活動は大半を許可している。テスト期間中や式典では制服の着用を義務化。ブレザーは「紺色」とだけ指定してズボンの形は自由としている。
糸井教諭は「放任や無秩序ではなく、一定のルールの中で表現することが重要。他人を不快にさせるような服装や外見は、各自の責任となる」と話す。
◆教育のあり方を模索
新たな制服やエコスタイル導入前にあった保護者や教員、生徒らによる「校則検討委員会」の中では「統一感がない」、「制服がある方が楽ではないか」などの反対意見も出ていた。
現在、大きな混乱はなく生徒からは「任せてもらえていることがうれしい」とおおむね好評。ある女子生徒はブレザーにリボンでなくネクタイをあしらうなど、各自で工夫をこらした服装で学んでいる。
建築デザイン科1年の井上真希さん(16)は「それぞれの個性が出て面白い。別の学校の友達からは、うらやましいと言われた」と語る。将来の夢は建築士。中学の早い時期から同校への進学を決めていた。「丁寧に教えてもらい、楽しく学べている」と声を弾ませる。
少子化が進み、近年は県内の工科高校で定員割れの状況が続いている。同校は、約7割が卒業後に就職。生徒の大半は数年後に社会に旅立つ。糸井教諭は「怒られるからやらない、言われたことだけこなす、そのような生徒では社会で活躍できない」と指摘する。
価値観の変化が進む時代の中で教師と生徒の関係性、学校と地域社会のつながり方など、最善の教育のあり方を模索している。「教員も学び、考えて悩み続けることが必要。他校にも影響を与える取り組みを続けたい」と話している。