片桐さんが民俗芸能支援に挑戦/広島大3年、卒業後は故郷の新城へ
2025/04/03
片桐さん㊧と下江市長(新城市役所で)
「社会に出る前に起業するのはリスクが大きいけれど、祭りがなくなっていくのを見過ごせない」―。熱い思いを語るのは、新城市出身の広島大学総合科学部3年、片桐萌絵さん(20)だ。民俗芸能の担い手確保などを支援する事業プランを掲げ、昨年度、4件のビジネスコンテストで受賞を重ねた。近く会社を起こし、コンサルティング事業を実践に移していく。
祭り好きになった原点は父の出身地である東栄町古戸地区の花祭で、3歳の頃から毎年舞いに加わっている。人とのつながりを感じられることが、その魅力という。
「花祭ではすごく遠くから来る方とも知り合う。名前さえ知らないまま毎年仲良くできるというのは、祭りでしかできない」
しかし、伝統的な祭りは全国で急速に姿を消しつつある。片桐さんは大学進学後、民俗芸能を守ることを意識した活動を始めた。
まずは古戸の花祭のパンフレットを制作したり、岡山県の獅子舞行事に笛の吹き手として参加したり。あちこちの祭りに赴き、SNSなどで発信も続けた。
その取り組みが注目されたのは、昨年7月にあった広島県東広島市の三津祇園祭だ。高齢化で人数が減った大名行列への有料参加者を募るプロジェクトを企画、運営し、大学生ら32人を集めた。
奮闘ぶりは新聞などに取り上げられただけでなく、地元の人たちの刺激になった。80人程度に減っていた祭りの規模は約150人まで回復したという。
今年2月、大阪市で開かれた学生対象のビジネスコンテストでは「祭りを見せる側だからこそ体験できる感情がある。ただの観光でなく、どっぷり浸かって達成感を経験できるプログラムを作る」と熱弁を振るった。
全国から勝ち上がった学生同士が競う大会だったが、見事に最優秀の経済産業大臣賞を受賞した。
これらコンテストの賞金を元手に今月、「とらでぃっしゅ株式会社」を東広島市で設立する。各地の祭りの担い手募集や、観覧者拡大に向けた広報のアドバイスを手がけていく。
2年後に大学を卒業すれば、新城市へ戻ってくるつもりだ。「新城が好きという思いがあるし、愛知県はすごく民俗芸能が豊か。自分のフィールドとして、いろいろなことを試してみたい」と将来を見据える。
2日には新城市役所を訪れ、活動実績や今後の計画を報告した。下江洋行市長は「見せる側に参加するというニーズはすごくあると思う。多くの人に関わってもらえる」と評価した。
片桐さんは、民俗芸能の活性化が地域の元気につながると考えている。「祭りでは良くも悪くもありのままが見える。外から1回入ってもらえば地域の人たちにまた会いたくなり、ディープなファンが増える」
大好きな地元を盛り上げたいという、若い挑戦に期待したい。