三つ巴 波乱の市長選

【新アリーナが問うもの㊥】“少数派”長坂市長誕生直後から市議会混乱

2025/07/12

バンザイをして市長選での初当選を喜ぶ長坂氏(昨年11月撮影)

 そもそも豊橋公園に新アリーナを建設する構想は、浅井由崇前市長より一代前の佐原光一氏の市長時代に打ち出された。2017年3月、当時の佐原市長は首相官邸で開かれた「未来投資会議」で、安倍晋三首相を前に新アリーナ構想を説明した。当初から、三遠ネオフェニックスの本拠地になる想定だった。

 民間資本を活用して建物を整備しようとした市は、提案募集にただ1社応じたスポーツ用品大手の子会社と18年から基本協定の締結に向けた協議を始めた。しかし、条件面で折り合わず交渉は難航。19年7月に協議は打ち切られた。

 なおも新アリーナ計画をあきらめない佐原市長だったが、有権者の選択に足をすくわれた。20年11月の市長選で、愛知県議を辞して出馬した浅井氏が佐原氏らに勝利した。

 選挙期間中、計画を「いったん白紙に戻す」としていた浅井市長は、市内の複数の場所を候補に挙げ建設地を改めて検討。22年5月、記者会見で候補地に再び豊橋公園を選んだことを明らかにした。豊橋駅からのアクセス性などが考慮された結果だった。

 たとえ手続きを踏んでいたとしても、この選定プロセスには分かりにくさがつきまとい、「公約違反」と受け取った市民もいた。反発する市民らが結集し、計画の賛否を問う住民投票を求めて22年12月と23年11月に必要数以上の署名を市に提出した。しかし豊橋公園での新アリーナ建設に賛成する市議が多い議会構成のもと、2度の直接請求はともに退けられた。

 憤る計画反対派が思いを託したのが、当時市議だった長坂氏だ。議会内でも浅井市政批判の急先鋒だった長坂氏は「市長を代えよう、公約守ろう」と訴えて市長選に出馬。浅井氏と、元市議会議長の近藤喜典氏との事実上の三つ巴(どもえ)の戦いを制した。

 ただ、それぞれの得票数を見ると浅井氏は4万1094票、新アリーナ計画に賛成を表明していた近藤氏は3万6079票で、両者を合わせれば長坂氏の4万5491票を大きく上回る。この事実を捉え、計画賛成派は市長選での勝利をもって契約解除に突き進む長坂市長の姿勢を非難した。

 選挙直後から市議会は混乱に見舞われた。12月定例会では賛成、反対両派から住民投票を目指す動きが表面化。だが結局、賛成派は条例案を引っ込め、反対派の案は否決され実現しなかった。

 続く3月定例会。長坂市長は市民生活に影響する25年度当初予算の成立にこぎつけたものの、同時に建物の設計費や予定地に建つ野球場の解体撤去費など新アリーナに関連する賛成派の予算の組み替え要求も飲まざるを得なかった。

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