国保値上げ相次ぐ

東三河8市町村/医療費増で運営曲がり角/膨らむ費用どう分担? 住民も向き合う姿勢を

2025/09/06

市町村別国保税・料率

 農業や自営業、年金暮らしをする人の中には、この夏、国民健康保険税・料の通知を見て驚いた方が少なくないだろう。東三河では今年度、5市町村が税率・料率を引き上げたのだ。残る豊橋、蒲郡、設楽の3市町も引き上げを含む改定を実施。医療の高度化などで医療費が膨らむ中、国保の値上げ基調が明確となっている。

 このうち田原市は2年連続で税率をアップ。同市の示した計算例を見てみると、世帯主(42歳・給与収入500万円)、妻(38歳・同130万円)、子(10歳・所得なし)の3人家族の場合、今年度の納付額は54万9500円だ。

 同じ条件で昨年度分を計算すると50万4200円だったから、世帯の税額はたった1年で4万5300円増となる。

 新城市も今年度まで2年連続で税率を引き上げた。設楽町は引き上げ方向の料率改定が4年続いている。

 「増税」が相次ぐ要因として、医療高度化や高齢化の進行で1人当たりの医療費が増えたことが挙げられる。これに伴い、市町村から県へ納める国保事業費納付金も、被保険者1人当たりでは上昇傾向だ。

 ■先細る事業基金
 加入世帯から集めた国保税・料で費用を賄えない市町村は、事業基金を取り崩すなどして穴埋めしてきたが、それにも限界がある。

 田原市の23年度末の基金残高はわずか4118万円で、18年度末の6億9924万円の6%弱に過ぎない。蒲郡市も同じ5年間で残高がほぼ半減し、2億920万円になった。

 新城市では約4分の3の6億9818万円に。設楽町は別の基金から資金を移し、残高を補った。

 こうした現状に、ある自治体の担当者は「来年度以降も税率引き上げが必要となるだろう。急な増額は望ましくなく、もっと早くから対応すべきだった」と反省を口にした。

 一方、機動的に料率を変更してきた自治体もある。豊川市は「事業が赤字にならないよう毎年度、料率を設定している」(保険年金課)といい、近年は基金の取り崩しをせず、利子を積み上げてきた。

 国保事業は安心して医療を受けるための大切な基盤だが、自治体によっては今、運営が曲がり角を迎えている。膨らむ負担をどう分かち合うべきか。赤字補てんの是非を含め、住民はしっかり向き合う必要がある。

 健康保険組合や共済組合に加入するサラリーマン、公務員は「自分と関係ない」と思うかもしれないが、決して他人事ではない。退職後は大半が国保に加入することを忘れないでほしい。

◇ ◆ ◇

 国民健康保険 加入者が納める保険税・料と国、県からの交付金を財源に、病気やけがなどに保険給付を行う。市町村などが運営し、2018年度からは都道府県も財政運営の役割を担う。

田原市の示した計算例

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