昭和100年写真が語る渥美半島の歩み

⑭「越戸海岸の今昔」/加工場に迫る海食崖、今は樹木と護岸堤防

2025/10/07

防波堤から1961(昭和36)年に撮った越戸海岸(田原市博物館所蔵)

 上の写真の背後に見えるのは大山。ほうべの海食崖の上には黒松が生え、加工場と網小屋が建っている。狭い砂浜と波間に点在する岩礁。2艘(そう)の木造の機械船が崖下に引き揚げられている。昭和20年代半ばに導入され、2艘でシラス網を引いていたが、1959(昭和34)年の伊勢湾台風の被害を境に衰退していった。

 写真は越戸(おっと)海岸の防波堤から撮影したものだ。41(昭和16)年に発行された『半島渥美』よると、防波堤は28(昭和3)年に着工され、翌年に完成した。渥美半島の表浜では、昔から難破船が非常に多く、避難港建設が計画された。怒涛(どとう)逆巻く中で南北78㍍、幅5・5㍍、先端から西へ27㍍の防波堤を築くのは難工事であった。真冬で大潮の真夜中にセメントを詰めた南京袋を海に投げ入れ土台を作った。体を波間にさらしての上塗り工事は、塗れば波にたたき落され、苦労の連続であった。波の運ぶ砂のために防波堤の中が浅くなり、避難港として利用はできなかった。

 下の写真は、現在の越戸海岸。かつて加工場があった海食崖は、竹や樹木に覆われ、前面には護岸堤防。砂浜が失われた海岸にはむき出しの岩礁が露出し、消波ブロックも置かれている。

 地元の大根義久さん(67)は「70(昭和45)年に学校にプールができるまで、夏になると防波堤の西側の海で泳いだりして遊んでいた」と懐かしそうに話した。

現在の越戸海岸(2023年に藤城信幸撮影)

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現在の越戸海岸(2023年に藤城信幸撮影)

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