戦争知らない世代の架け橋に

渥美線電車機銃掃射の記録語り継ぐ「前日の会」

2025/12/09

絵本を見せて読み聞かせをする佐久間さん(黒板の前の右側)=清田小学校で、提供

 太平洋戦争終戦の前日、現在の田原市を走る電車が米軍機の銃撃を受けて31人が死傷した「渥美線電車機銃掃射」の記録を語り継ぐ田原市民グループ「前日の会」(彦坂久伸代表)に加わった新しい仲間2人が、戦後80年の節目に出前授業でデビューした。会員で機銃掃射を知る世代が激減し、存続が危ぶまれていた。会は頼もしい助っ人に「戦争を知らない若い世代の架け橋になってほしい」と期待する。その一方で「もっと入会を」と会員の募集を呼び掛けている。

拍子木役の岡本さん(右端)=同

新たに2人が出前授業でデビュー

 ■ 戦争はいかん
 2人のうち一人が田原市谷熊町の佐久間幸子さん(67)。会が8月の機銃掃射の慰霊祭での追悼の辞を載せて会員を募集した地元の新聞店のPR版が目に留まり、「『戦後80年』の80と言う数字が90、100と増え続け、ご破算にならないことを願う」と会の平和を思う気持ちに心が動いいた。「平和の大切さを伝えるため関わりたい」と入会した。

 もう一人は市内野田町の岡本次生さん(65)。知り合った山田政俊前代表から誘われた。歴史好きだったことから、会の一員となった。

 会員として正式には10月の今年度の総会時。その後、佐久間さんは、機銃掃射の時に病院で看護師として救護に携わった数え100歳の名誉会員を訪ねて院内の様子を聴き、岡本さんは、戦争の爪痕が残る市内の戦争遺跡を巡った。2人は会が企画した名古屋市の戦跡見学にも参加し本番に備えた。

 2人は先月17日にデビュー。田原市清田小学校での「平和学習」の出前授業に参加した。会は機銃掃射の様子を現した紙芝居「前日物語」を上演し校区内で起こった戦時中の姿を取り上げた中で、佐久間さんはフィナーレを飾る読み聞かせ役を担当。詩人だった谷川俊太郎の絵本『せんそうしない』を情感込めて読んだ。岡本さんは拍子木役を務めた。山田前代表が紙芝居の台本を読み上げると、節目節目に「カンカン」とたたき、紙芝居を盛り上げた。

 11、15日の豊橋市老津小の出前授業を控え、佐久間さんは「今後、会で学んだことを若い人に伝えたい」と話し、岡本さんは「戦争はいかんと呼び掛けたい」と語った。

 ■若い人の参加を
 前日の会は、前身の「豊川流域研究会」を含め活動が10年を過ぎた。設立時は機銃掃射の体験者を中心に会員が約50人いた。しかし、高齢化や死去で激減し会員の実働部隊は数人に減った。会員募集などで2人のほかに、市内60代の藤江昭範さんと80代の奥隆さんが仲間入りした。

 彦坂代表は「藤江さんらにも出てもらうつもり」と話し、「数年後には戦争体験者ゼロが予想される。どう伝えるかの問題もあるが、それ以上に若い人たちに加わってほしい」と話した。問い合わせは電話090(9928)7491へ。

◇ ◆ ◇

 渥美線電車機銃掃射 終戦前日の1945年8月14日、三河田原駅を出発した名古屋鉄道(現豊橋鉄道)渥美線の電車が、現在の田原市の神戸駅付近で米軍機の機銃掃射を受け、乗客約40人のうち乗員らを含め15人が死亡、16人が負傷した。近くの踏切の前に「大東亜戦争動員学徒殉職之碑」が建立されている。

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拍子木役の岡本さん(右端)=同

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