美術集団「从会」代表・豊橋の大野さん
2026/03/24

大野代表が49回目の从展に出品する「平凡な日常―F・A・C・E―」の4点(東海日日新聞社で)
アートの独自の世界を追究する美術集団「从(ひとひと)会」の代表で豊橋市の大野俊治さん(73)は、来年の50回目の从展に向け、自画像シリーズの集大成として大作に挑んでいる。日常のささいな出来事に目を向け、その時の心の動きを捉える新しい試みの作品だ。出品が予定される15点のうち、25~31日まで東京都美術館で開かれる第49回展には近作4点を出展する。
■うつろな表情
自画像シリーズは、タイトルが「平凡な日常―F・A・C・E―」。4点のうちの1点は、「長距離通勤で神経を擦(す)り減らし仕事山積ストレスマックス歯槽膿漏(のうろう)の歯茎疼(うず)く精魂尽果の萎(い)形」。碧南市藤井達吉現代美術館特任学芸員として自宅から週4日、車で往復約3時間半をかけて通う様子がうかがえ、「うつろな疲れた表情」を捉える。
もう1点は飲食店の休みを知らかった碧南での出来事。「昼飯を喰(く)おうと空腹抱えて三軒廻(まわ)るが全店休業その運の悪さを嘆くランチ難民オアズケの飢形」は、口が開き目尻が下がり、「飢えた顔」の特徴をよくつかんでいる。
残り2点のうち「因果応報」の例えを表した「固定された三角コーンを蹴って足を痛めたドジな輩(やから)を笑うも僅かな段差につまずく冷汗の焦形」は、「焦った顔」を現している。それと対照的に「退屈なベテラン漫才師が呟(つぶや)いた他愛もないギャグがツボにハマり笑い転げて腹筋を痛める壊形」は、「腹の底から笑っている感じ」だ。
■心の動きを形に
「個性派画家」の大野さんは、豊橋市美術博物館学芸員を経て市民文化会館館長を退職した23年から、平凡な日常―F・A・C・E―の制作を始めた。一線を退き職場が碧南と環境が変わり、自宅にいる時間も長くなったことで、暮らしの中から自画像を通して「喜怒哀楽」を形にすることにした。
これまでは目に見えないものを形にして発表した。そのうちの代表作100点を文化会館ホールリニューアルオープン記念として22日まで開かれた特別展に出展し、日本画を始めてから約40年間を振り返った。
この作風の変化で新たな挑戦への第一歩となる。すでに今回の4点を含む11点を描き上げ、うち7点を一昨年と昨年の从展に出展した。訪れた会員の親から「絵をながめタイトルを見て大笑いした」との反響があり、手応えを感じている。
■親近感を持って
記念の50回展には仕上げた11点に新たに描く4点を加えて展示する予定。大野さんは「訪れる人が作品に親近感を持ってもらえたらうれしい」とPRする。
並行する形で25日から都内中央区の不忍画廊で始まる関連の小品展には、1点を出展する。4月4日まで。
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从(ひとひと)会 1974年、「戦後の日本画の変革者」と呼ばれた豊橋市出身の中村正義、星野眞吾が中心となり結成された。会員らが生きる時代を独自の思考と造形で探って行く個性派ぞろいの美術集団。毎年3月、東京都美術館で从展を開く。現在、代表で豊橋市の大野俊治さんが自宅に事務局を置く。作品の「化身」は星野の推薦で出展した初の作品だ。会員は現在20人。