地元大工の匠の技で新設/シンボルとして涼しげな風情届ける
2026/05/14

水車を眺める加藤代表㊧と山口店長(東京庵豊川店で)
うどんそば処の「東京庵豊川店」(豊川市馬場町)のシンボルとして親しまれ、故障していた「水車」が4月中旬から動き始めた。老朽化により約1年間止まっていたが、加藤建築(豊橋市石巻本町)の加藤泰久代表が新たに作り直し、涼しげな水音を届けている。東京庵の戸倉信一郎社長は「多くのお客さんに見ていただきたい」と話している。
水車は昨年春に故障。夏ごろに戸倉社長が加藤代表に修繕を頼んでいた。止まった水車は4年ほど前に県外の業者が施工。約10年間の稼働を見込んでいたという。戸倉社長は「復活させたいが、また短期間で壊れてしまっては困る」と修理先を探していた。
常連客からは「水車はどうしたのか」という声が多く、インターネットにはシンボルを懐かしむ書き込みが寄せられた。知人の紹介で加藤代表と会い、「10年間は動く水車を作ってほしい」と依頼。施工後の定期的なメンテナンスも約束して完成を待っていた。
豊川店は1976(昭和51)年に開店し、半世紀にわたって和食を提供してきた。一番人気のメニューは「水車天ざるそば」。高速道路や豊川稲荷に近く、県外の観光客にも「水車のある店」として名をはせてきた。山口文昭店長は「お客さんから喜びの声が出ている。素晴らしい仕事をしていただいた」と感謝する。
加藤代表は「日本家屋大工」の棟梁(とうりょう)として「あいちの名工」や「とよはしの匠(たくみ)」などを受賞してきた。
壊れた水車は、軸の「シャフト」に過負荷が掛かってひずんでおり、水面を掻(か)くようにして回っていた年輪の若い木材は腐食していた。加藤代表は部品交換による「修理」は無理だと判断して設計をやり直した。
樹齢150年以上の材木を使用して製造。約半年間の自然乾燥を行い、水分を抜いて「木目が締まっている」という直径約3メートルの高強度な水車を組み上げた。
予算に合わせて木材を選び、シャフトや軸受けへの組み合わせ方を考え抜いた。当初の完成期限は過ぎても、木の乾燥を気長に待って一過性の外見ではない「本物」を作ることに心を砕いた。
戸倉社長は「信じて待ったかいがあった出来栄え」と語る。加藤代表は「地域のシンボルを作り上げる仕事は光栄だった」と感慨深く水車を見つめた。