価格高騰や天候不良 厳しい経営下の農家悲鳴/田原署警戒強化 協力や対策呼びかけ
2025/02/09
被害に遭ったキャベツ畑(田原市内で)
田原市の旧渥美町地区で今月、畑からキャベツが大量に盗まれる窃盗事件が起きた。市場価格が高騰する中、昨年に続いて被害に遭った農家は対策に苦慮している。農業に一定の知識がある者の犯行とみられ、田原署は警戒を強めて各農家に自衛策や通報の協力を呼びかけている。
◆厳しい経営と生育環境のさなか
被害農家の男性によると、今月5日にキャベツ約800個がなくなっているのを見つけて署に被害届を出した。昨年の猛暑や大雨の影響で今年は畑の中で生育状況がふぞろい。市場価格が高くなるサイズに育ったキャベツのみが切り取られていた。
重さは約1トンにもなり、車両を使って複数人で持ち去った可能性が高い。男性は「切り取り方や、サイズを見極めて奪うやり方が手慣れていると感じる」とため息交じりに語る。
数年前から少量の被害が続き、畑の入り口に防護柵を設置。昨年1月には約1000個が盗まれ、警戒する中での出来事だった。市場価格は昨年同時期から約2倍に高騰。通年と比べて生育が遅いため年末年始に出荷できず、収穫量は例年の約6割にとどまっている。
近年は燃料や飼料代が高騰して各農家は厳しい経営が続く。犯行までに現場の下見や物色を行い、複数の畑を管理する男性の行動までを把握した計画性も感じ取れるという。
被害後は、連続発生を懸念してやむなくサイズの小さなキャベツを収穫して出荷した。多大な損害をこうむり、男性は「同業者に疑いの目を向けるのは心苦しいが、苦労して育てた野菜を奪うのは一線を越えた理不尽な行為」と農業者を代表して訴える。
◆連続発生を懸念
旧渥美町や旧赤羽根町地区では昨年、複数の畑で多量の農作物が盗まれる被害が起きた。露地野菜の防犯対策は難しく、田原署はパトロールの強化や啓発チラシを配布するなどの対策を図ってきた。
同署の筒井勇副署長は「見かけない人物や車を見た際は、断片的な情報でも良いので警察に通報していただきたい」と解決に向けて協力を呼びかけている。