渥美線電車機銃掃射 説明板設置へ

市議会一般質問で 田原市が取り組み検討方針/風化防止や史実継承に意欲/非核・平和都市宣言 戦後80年迎え強い決意

2025/03/06

出前授業を開く「前日の会」の彦坂代表㊨ら(田原市内の小学校で、提供)

 太平洋戦争の終戦前日、現在の田原市を走る電車が米軍機の攻撃を受けて31人が死傷した「渥美線電車機銃掃射」について田原市は5日、説明する看板を設置する意向とともにその出来事を風化させない取り組みを検討すると明らかにした。昨年度に「非核・平和都市」を宣言し、今年が戦後80年を迎えるにあたり平和を強く意識した決意とみられる。

 ■責務と考える
 この日の定例市議会の一般質問で、小川金一市議は機銃掃射を受けて亡くなった人たちの慰霊碑が田原市の豊橋鉄道渥美線の神戸駅近くにあることを取り上げ、「これを説明したものはなく、市民のほとんどはここで何が起こったか知らない」とし、「悲惨な戦争を次世代に伝えるため表示内容を考え、豊橋鉄道などと相談して適地を探し進めてほしい」と市に看板設置の検討を働きかけた。

 小久保智宏福祉部長は「戦争の悲惨さを後世に伝えていくことが市の責務と考える」と強い決意を示した。そのうえで「表示内容や設置箇所など課題は多くある」としながらも、「豊鉄などの関係機関と看板設置に向けて話し合う機会を設けていきたいと思う」と働きかけを受け入れた格好だ。

 また、この空襲体験を語り継ぐグループ「前日の会」(彦坂久伸代表)が毎年、慰霊碑前で慰霊祭を開いていることに触れ、「会員で語り部は高齢で亡くなる人もあり、このままでは開催が困難になる可能性がある」と指摘。市が中心となって関係機関に呼びかけ「追悼行事を開いたらどうか」と見解を求めた。

 小久保福祉部長は「この史実を風化させないための取り組みを関係者の意見を伺いながら検討したい」と語ったものの、具体的に何をするかは触れなかった。

 前日の会は、空襲体験者らから聞き取った内容を紙芝居などに仕立て市内の小学校を中心に「出前授業」を開いている。「活動内容のチラシを教育現場に配るなど支援する考えはないかと」と市教育委員会に協力を呼びかけた。

 増田直道教育部長は「平和教育の推進に有効な情報などを各学校に周知するなど可能な協力を行っていきたい」と理解を示した。

 彦坂代表は「私たちの地道な平和教育の取り組みが市に評価され、応援してもらえることで市全体に浸透させるきっかけになると思う。ありがたい」と感謝した。

 質問した小川市議は「平和都市宣言の意義を考え、戦後80年の節目に看板設置を期待しているが、その時期が示されず残念だった」としながらも、「市の平和への取り組みに意気込みが感じられた」と一定の評価をした。

【渥美線電車機銃掃射】

 1945年8月14日、三河田原駅を出発した名古屋鉄道(現豊橋鉄道)渥美線の電車が、現在の田原市の神戸駅付近で米軍機の機銃掃射を受け、乗客約40人のうち、乗員を含む15人が死亡し、16人が負傷した。駅近くの踏切前に「大東亜戦争動員学徒殉職之碑」が建っている。

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