病床で…そして母亡き後も挙行/娘から感謝込めて/ゲストハウス「セレスト」協力 粋な計らいも/豊川
2025/10/06
病床の邦子さんにウエディングドレス姿を見せた愛子さん㊥(提供)
豊川市で、珍しい形で家族との思い出を築く〝結婚披露宴〟があった。一宮町在住の丸山愛子さん(45)は3年前に母邦子さんを亡くしたが、結婚式場を営むゲストハウス「セレスト」の協力で、最愛の母にウエディングドレス姿を見せることができた。
2021年秋、邦子さんはがんで余命1年と診断された。愛子さんは再婚相手の佳孝さん(45)や子どもたちと相談し、在宅介護で母と最期の日々を過ごした。
翌年11月、邦子さんに「何かしたいことはある?」と聞くと、母が枕元で「ウエディングドレス姿を見たい」とつぶやいた。愛子さんは初婚でも式を挙げていなかった。セレストに連絡すると、松井邦慶代表(53)が温かく相談に応じてくれた。
同社専属のプランナー、衣装店、美容師と打ち合わせを重ね、ドレスを3回試着。結婚披露宴は12月20日に決まり準備が進んだが、その1週間前に邦子さんの容体が急変。豊橋市内の医療機関に緊急入院した。この事態に、松井代表は医療機関の協力も得て病院で〝披露宴〟を挙げることを提案した。
新型コロナウイルス禍で、面会は3人まで。愛子さんと佳孝さん、撮影係として長男虹明(こうめい)さん(21)が病院を訪れた。純白のドレス姿の愛子さんらは邦子さんを囲んで記念撮影。脳にがんが転移していた母は言葉を発せなかったが、愛子さんは「何度もうなずいたりして、喜んでくれていた」と振り返る。そして31日、母は71歳で旅立った。
49日が過ぎて気持ちも落ち着いた翌年5月28日、改めてセレストで家族そろって結婚披露宴を挙げた。母の遺影も見守る中で楽しい時間。「子どもたちは1年間、母の介護を本当によく手伝ってくれた。その感謝も伝えたかった」と明かす。
卓上にはサプライズで母が好きだったお好み焼きやチャーハンが並んだ。記念動画に一瞬映り込んだのを見逃さなかった松井代表による粋な計らいだった。
愛子さんは振り返る。「家族みんなで支え合い、母の希望をかなえ、感謝を伝えられた。母には迷惑をかけたけど、セレストさんのおかげで最後に親孝行ができた。言葉を話せなかった母と私からは感謝しかありません」。