技科大ロボコン「連覇へ」《Ⅺ》㊤

大会前夜に急きょ改修/ローカルルールに一晩で対応も…/リトライで惜敗―「あっぱれ」宿敵・香港たたえる

2024/09/01

ABU大会に出場した豊橋技科大の選手とピットクルー(提供)

 豊橋技術科学大学ロボコン同好会は昨年の初優勝に続く2連覇を目指し、8月25日にベトナムで開かれた「ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト」に臨んだ。しかし、結果は悔しいベスト4。国際大会ならではのハプニングで窮地に立たされ、技科大へのリベンジに燃える香港チームの前に、連覇の夢は砕かれた。

 ◆大会前日

 テストランの行われた大会前日、ベトナムに乗り込んでいたロボコン同好会に衝撃が走った。ロボットの寸法に関するルールが、国内とABU(アジア太平洋放送連合)大会で異なることが分かったからだ。

 今年のルールでは、試合開始時のロボットは一辺70センチの立方体サイズに収まるようにし、開始後は90センチまで機構を広げることが許されている。問題になったのは、トラブルや反則があった場合の再スタート時の寸法だ。日本の大会では接地面だけ70センチ以内に収まればよかったが、ABU大会では、開始時と同じ、全体を70センチの立方体に収めなければならないと知らされた。

 技科大の自動制御ロボットR2は、試合開始後にボールをつかむアームが70㌢を超えて伸び、再スタート時はそのまま再起動する設計。国際ルールにのっとれば再スタートが認められず、負けに直結する致命的影響がでる。

 設計の大前提を覆すルールに、同好会の宮下功誠代表(4年)らは主催者に抗議を申し入れたが、受け入れられない。いまさら設計変更もできず、プログラムの改修だけの緊急措置で対応するしかない。しかし、大会前夜にプログラムを改修できても、その動作を確認する機会がない。うまく動くかは、ぶっつけ本番で試すしかなかった。

 ◆予選リーグ

 予選リーグ初戦のエジプト戦。技科大は実力差を見せ大きくリードを広げた時点で「リトライ」を宣言した。ロボットを再スタートさせ、改修したプログラムの動作を確認するためだ。幸いロボットは思い通りに動き、土壇場で窮地を脱することができた。

 毎年競技の変わるロボコンでは細部のルールが徹底されず、国ごとに異なるローカルルールが存在することがある。昨年の大会ではそのまま試合が行われ、判定を巡りもめるケースもあった。

 「国際大会では何があるか分からない」という宮下代表。「プログラム変更を一発で決めてくれたメンバーはすごい」と同好会の技術力には胸を張った。

 ◆準決勝

 予期せぬピンチを乗り越え予選リーグを連勝で突破、準々決勝であたった強豪中国も僅差で下した。そして準決勝で待っていたのは、昨年の決勝で日本に敗れ雪辱に燃える香港中文大学だった。

 宿敵との勝敗を決したのは、技科大のロボットR2のおかした「リトライ」。リトライはトラブルや反則を犯した時のペナルティー、ロボットを再スタート位置まで戻さなければならず、その間に対戦相手は点差を広げる。強豪同士では1回のリトライが勝敗を分けてきた。

 特に、R2が紫のボールを中央のイエローゾーンに持ち込んでしまう「反則」は、散らばるボールにロボットが触れて偶発的に起こってしまう。防ぐのが難しく、多くの大学が対処に苦慮した。その反則を技科大も香港戦でおかしてしまい、再スタートの間にリードを許し、連覇の夢が断たれた。

 宮下代表は試合を振り返り「対策はしてきたが詰め切れなかった。香港はボールにぶつからないような対策をしていた。勝敗は時の運だったと言う人もいるが、安定性で差があった。香港は決勝まで一度もリトライしていない。あっぱれだ」とライバルに脱帽した。

リトライしてロボットを再スタート位置に運ぶ技科大チーム(ユーチューブから)

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リトライしてロボットを再スタート位置に運ぶ技科大チーム(ユーチューブから)

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