急転直下 市初の住民投票決定

【新アリーナが問うもの㊦】「賛成多数なら継続」市長明言 市民の選択は―

2025/07/13

豊橋市初の住民投票を告知する看板(豊橋駅東口で)

 事態が急転直下の展開を見せたのは、豊橋市議会5月臨時会だ。膠着(こうちゃく)状態を打開しようと、新アリーナ計画に賛成する市議らと反対する市議らが共同で、事業継続の賛否を問う住民投票条例案を提出。賛成多数で可決され、同市初の住民投票の実施が決まった。

 重要なのは、長坂尚登市長が投票結果を尊重し「賛成多数なら事業を継続する。反対多数なら契約解除する」と明言していることだ。

 結果次第で方向性が大きく変わる可能性が出てきたため、条例の可決直後から賛否両派は住民投票に向けた活動を開始。それぞれ街頭に立って演説したり、チラシを配ったり、集会を開いたりして自分たちの主張の浸透を図った。

 そんな中、豊橋ネクストパークが初めて市民に向け事業について説明した6月19日のシンポジウムは、一つのハイライトだった。

 この場で同社の幹部は、契約上は施設の30年間の維持管理費がゼロ円になる理由を「スポーツや興行で得る収入で賄っていける」と説明。その実現のために約230億円の総事業費の全額を整備費に振り向け、「グレードの高いアリーナ」を建設する計画だと述べた。

 新アリーナに伴う公園周辺での交通渋滞の発生を心配する市民の声に対しては、徒歩での来場者に地元商店街の協力を得てクーポン券を配るほか、イベント時の路面電車(市電)の臨時増便や、中心市街地に約3400台分ある駐車場を利用する案を披露。予約制や料金変動制を公園駐車場に導入する可能性も示した。

 こうして事業に関係する、または関心を持つ幅広い主体が情報発信を繰り返してきた一方で、住民投票の判断材料が出そろったかと言えば疑問が残る。解約した場合に事業者に支払うはずの損失補償金などの金額は不明なまま。事業を白紙に戻した後の豊橋公園の将来像を長坂市長が明確に示さないことに不審感を募らせる市民もいる。

 参院選が公示された7月3日以降、条例の規定で投票運動は制限され、活動が許されているインターネット空間でさまざまな主張が拡散している。

 SNS(交流サイト)では匿名性の高さも手伝ってか、考え方の違う相手を強い調子で批判する様子が散見される。事業に関する根拠不明の情報も混じっていて、投票行動を誤った方向に導く恐れもある。

 ようやく近年の市政課題で大きな議論を呼んできた新アリーナをめぐる騒動が決着を見るかもしれない局面を迎えてもなお、意見対立から生まれた市民の分断は深まりこそすれ容易に解消しないのではないかと懸念されている。

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